労働条件

【求職者は要注意】求人の「労働条件」の明示の仕方や「申込み」の制度が変わる(平成30年1月から)

12月は退職が比較的多い時期かと思います。

退職して、仕事を探そうというときにまず行くのは、ハローワーク(公共職業安定所)ではないでしょうか?

そこで必ず見るものが求人票だと思います。その求人票などにかかわる法律改正が行われます

職業安定法や省令・指針の改正に伴い労働者の募集や求人申込みの制度が変わります。




労働条件の明示が必要なタイミング

会社がハローワーク等へ求人申込みをするときや、会社ホームページで募集、求人広告の掲載等で労働者の募集を行う場合は、労働契約締結までの間に、求人票や募集要項等において一定の労働条件(業務内容や契約期間、労働時間、賃金等)を明示しなければいけません

原則として、初回の面接等、求人をしている会社と求職者が最初に接触する時点までに、全ての労働条件を明示すべきとされています。

今回の改正で、当初明示した労働条件に変更があった場合、その確定後、可能な限り速やかに変更内容について明示しなければいけなくなります。(面接等の過程で労働条件に変更があった場合は、速やかに求職者に知らせるよう配慮が必要になります。)


最低限明示しなければならない労働条件等が追加されます

労働者の募集や求人申込みの際に、書面の交付によって明示しなければならない労働条件が定められています。(ただし、求職者が希望する場合には、電子メールによることも可能)

今回の改正で、従来の求人票情報に以下の事項が追加されます。

・ 試用期間
・ 裁量労働制(採用されている場合)
・ 固定残業代(採用されている場合)
・ 募集者の氏名または名称
・ 雇用形態(派遣労働者として雇用する場合)




変更明示が必要な場合

以下のような場合には、変更の明示が必要となりました。

(1) 「当初の明示」と異なる内容の労働条件を提示する場合


例)当初 : 基本給30万円/月  →  基本給28万円/月

(2) 「当初の明示」の範囲内で特定された労働条件を提示する場合


例)当初 : 基本給25万円~30万円/月 → 基本給28万円/月

(3) 「当初の明示」で明示していた労働条件を削除する場合


例)当初 : 基本給25万円/月、営業手当3万円/月 → 基本給25万円/月

(4) 「当初の明示」で明示していなかった労働条件を新たに提示する場合


例)当初 : 基本給25万円/月 → 基本給25万円/月、営業手当3万円/月

なお、変更内容の明示については、求職者が変更内容を適切に理解できるような方法で行う必要があります

例えば、「変更前と変更後の内容が対照できる書面を交付する」や「労働条件通知書において、変更された事項に下線を引いたり着色したり脚注を付けたりする」などがあげられます。

変更明示が適切に行われていない場合や、当初の明示が不適切だった場合(虚偽の内容や、明示が不十分な場合)は、行政による指導監督(行政指導や改善命令、勧告、企業名公表)や罰則等の対象となる場合があります。

万が一、そういうことがあればお近くの都道府県労働局にご相談されるとよいでしょう。(執筆者:高橋 豊)

【読者の質問に回答】「〇〇万円の壁」がなくなっても、家族手当の壁が残ったままだと、世帯収入は結局増えないですよね?

【読者の質問】

配偶者控除が拡大で「パートの壁」の年収の目安は103万円から150万円へ 「4分の3基準」に注意ってどういう意味?

上記記事を拝見しました。いろいろと細かく説明があり、わかりやすかったのですが、いつもこういう話の中で ご主人の会社である家族手当の事が書かれていません。

103万円の壁や106万円の壁がなくなっても家族手当の壁が残ったままでは150万円以上の年収でもなければ家庭内の合計年収は増えないという説明も付け加えてほしいです。


私の回答

家族手当を支給することは、労働基準法などの法律に定められた義務ではないので、家族手当を支給していない会社や、配偶者を支給対象にしていない会社もあります

また家族手当の支給条件も会社が決められるので、配偶者の年収がいくらであっても、家族手当を支給している場合があります。

このような事情により、家族手当が受けられる年収の条件である「家族手当の壁」は、103万円の壁や106万円の壁ほどは意識されてはいないため、説明が抜けている場合が多いのかもしれません

また現状ではご指摘のように、年収が増えて家族手当が支給されなくなると、世帯年収が増えない場合がありますが、家族手当を支給する会社は減少傾向にあるため、将来的に家族手当の壁はなくなる可能性があります。

以上のようになりますが、この回答をさらに詳しく説明すると、次のようになっております。



常時10人以上の従業員が働いている場合には「就業規則」を作成する


労働条件に関する最低基準を定めた労働基準法を読むと、常時10人以上の従業員を使用する使用者は、「就業規則」を作成して、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないと記載されているのです。

この就業規則の中に記載すべき事項は、「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」に分かれております。

前者の絶対的必要記載事項とは、就業規則に必ず記載しなければならない事項であり、例えば勤務時間、休憩、休日、休暇、賃金、退職などに関することが該当します。

その一方で後者の相対的必要記載事項とは、会社で制度の定めをする場合には、就業規則に必ず記載しなければならないけれども、会社で制度の定めをしない場合には、就業規則に記載する必要がないことです。

家族手当を支給することは法律に定められた義務ではない


家族手当は賃金の一部ですので、支給条件や金額などについて、就業規則に記載しなければなりません。

ただ労働基準法などの法律には、「家族手当を支給しなければならない」とは記載されていないのです。

つまり賃金の構成をどのようにするかは、会社が決められるので、例えば基本給だけを支給して、通勤手当、家族手当、住宅手当などの手当を支給しなくても良いのです。

しかし家族手当の支給条件や金額などを就業規則に記載した場合は、家族手当を支給するのが会社の義務ですので、記載された通りに支給しなければなりません。

家族手当のために就労時間を調整する方は意外に少ない


家族手当を支給するか否かだけでなく、その支給条件や金額なども会社が決めて良いのです

ですから例えば子供だけを家族手当の支給対象にして、配偶者を支給対象にしていない会社もあります。

また配偶者を支給対象にしている場合には、配偶者控除を受けられる年収の103万円や、社会保険の扶養に入れる年収の130万円を、家族手当を支給するか否かの基準にしている場合が多いようです。

しかしその一方で配偶者の年収がいくらであっても、家族手当を支給している会社もあります。

こういった事情があるため家族手当の壁は、103万円の壁や130万円の壁ほどは、意識されてはいないようです。

その根拠になるものとしては、厚生労働省が有配偶女性パートタイム労働者に対して、「就業調整」(年収を一定額以下に抑えるための就労時間の調整)を行った理由を聞いた調査があり、その結果は次のようになっております。



≪画像元:厚生労働省 配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項(pdf)(クリックして拡大)≫


この調査結果を見ると、家族手当(表中には「配偶者手当」で記述)のために就業調整を行った方は20.6%であり、他の理由と比べるとかなり少ないとわかります。

家族手当を支給する会社は年を追うごとに少なくなっている


就業規則の記載内容を変更して、家族手当を縮小または廃止するのは、労働条件の不利益変更に当たるので、労働者の合意がない場合には実施できません。

しかし次のような事情から考えて、就業規則の記載内容の変更が「合理的」であり、かつ変更後の就業規則が労働者に周知される場合には、労働者の合意がなくても良いのです。

・ 労働者の受ける不利益の程度
・ 労働条件の変更の必要性と内容の相当性
・ 労働組合などとの交渉の状況
・ その他の就業規則の変更に関わる事情

実際のところ厚生労働省が作成した統計によると、次のように家族手当を支給する会社は、年を追うごとに少なくなっているのです。





2018年が始まる前に家族手当の支給条件などを確認しておく




2018年以降の配偶者控除の拡大により、年収150万円程度まで働くのが一般的になった場合には、家族手当の支給対象になる配偶者は大幅に減少します

そうなると家族手当の存在価値は薄くなるため、これを支給する会社は更に少なくなり、将来的にはなくなっていくのかもしれません

もちろん上記のように不利益変更は難しいので、家族手当を基本給に組み入れ、減給にならないような形で、家族手当の支給を止めるという選択肢もありえます。

ただすぐになくなるとは考えられないので、当面は読者の方がご指摘するように、家族手当が支給されなくなることによって、世帯年収が増えない場合があります。

ですから2018年が始まる前に、夫が勤務する会社の就業規則を見て、家族手当の支給対象に年収条件はあるのか、また年収条件がある場合はその金額について、確認しておいた方が良いと思うのです。(執筆者:木村 公司)