出国税

2019年度より新たな「出国税」を検討中 すでにある出国税とどう違うのか課題も含めて解説します

今年も残すところあとわずか。

年末年始、海外に行くことを検討し、今から準備を始めている人もいるのではないでしょうか。

多くの人の楽しみである海外旅行、これからコストが高くなるかもしれません。




「出国税」2019年度導入に向けて政府での調整がスタート

観光庁が現在、日本から出国する人に対し「出国税」を課税することを検討しています。

この「出国税」案では、一人当たり1,000円を課税し、航空運賃に上乗せして徴収される模様です。

対象は、訪日外国人旅行者の他、旅行や出張で出国する日本人を含むすべての出国者となっています。

この「出国税」創設の背景には、昨今の訪日外国人の急増と2020年の東京オリンピック・パラリンピックがあります。

安倍内閣はこのたび、2020年までに訪日外国人客を4,000万人に増やす目標を立てました

この目標達成にあたり、訪日客の受け入れ態勢整備などにあてる財源が不足することが予測されるため、この補填のために「出国税」が立案されました。

今秋には議論をまとめ、来年度の税制改正大綱に盛り込み、2019年度から施行する予定です。


既にある「出国税」とどう違うの?

「えっ?出国税って確かもうあったよね?」

「出国税ってお金持ちだけが対象なんじゃないの?」

本ニュースを聞いて、このように感じる方もいらっしゃるかもしれません。

この「出国税」は、すでに実施されている富裕層向けの「出国税」とは異なります。違う点は次の通りです。

既存の出国税


・ 課税庁は国税庁
・ 正式名称は「国外転出時課税制度」
・ 有価証券等の時価総額が1億円以上の人が対象
・ 保有の有価証券の時価に対して所得税が課税される

新たな出国税


・ 課税庁は観光庁
・ 正式名称は未定(国外転出時課税制度にも言えますが、出国税というのはあくまで仮称です)
・ 保有資産等は関係なく、出国する人に一律1人当たり1,000円
・ 税目は新たに創設(所得税など既存税目とは別)

このような点で区別をつけていただけると、よりニュースを理解しやすくなるかと思います。


今後の課題は

さて、新たな税金を作るとなると、同時に気になるのが「課題」です。

この「出国税」にも課題がないわけではありません。おもな課題は次の通りです。

1.そもそも必要な税金なのか


観光庁が使い道を判断できる予算の枠は年間約400億円です。しかし、すでに国家全体の観光関連予算は3,200億円あります。

そして、観光産業は観光庁のみの担当分野ではなく、実は他の省庁とも関連する部分があります。

観光政策向けの人材育成は各省庁でも行っており、重複しているのです。

さらに、こういった観光政策全体を、観光庁が自ら指揮をとり管理監督していくのでなければ効率化を図れません。

また、財源に充てるというのならば、その使い道を明らかにしておく必要があります。

しかし、その中身もまだ具体化していません。そればかりか、過去のプロモーションの効果すら分析が済んでいないのです。

一言で言うと「予算を組む前にこれまでを見なおしムダを省く必要がある」ということです。

2.コスト高に批判が集まる可能性があり




既に日本の主要空港の国際線では、大人1人あたり1,000~3,000円の空港施設利用料を徴収しています。

出国税という価格そのものは1,000円と安価です。そのため、出国税単独で批判を浴びることはないでしょう。

むしろ、「すでに出国の際にお金がとられているのになぜ余計にお金がかかるのか」という批判が発生する可能性があります。

また、新たな税目を創設する場合には、旅行会社や空港会社に新たなシステム作りなど負担がかかります。

創設する政府そのものは発案と号令だけでいいかもしれませんが、実際の労力やお金といったコストを負担するのは関連会社や国民、旅行者など末端の人々です

こういった層への配慮もまた必要だと思われます。

新たな税目が恒久的に導入されるのは、1992年の地価税以来、実に27年ぶり

その時の状況と今はかなり異なりますが、日本でホットなテーマについて課税が導入されるという点では共通しています。

今を受けて今後につながる税目だからこそ、慎重な議論を期待したいものです。(執筆者:鈴木 まゆ子)

日本人にはすでに課税対象の「出国税(国外転出時課税)」 さらに2つ目の「出国税」が検討中ってほんと?

日本の繁華街・名所で数多くの外国人観光客が訪れるようになりましたが、そのような中で水を差すように見える「出国税」の徴収を検討するとの報道がされています。

まだ検討段階ではありますが、観光客でない日本人からの徴収も検討しており、さらに日本人にはすでに課税対象の「出国税」もすでに存在していますので、整理しながら見て行きましょう。




すでにある出国税:金融商品に対する含み益(所得)課税

平成27年7月以降導入されている出国税は、税目としては所得税に該当し「国外転出時課税」とも呼ばれます。

これはこの名のとおり外国人にかけるようなものではなく、日本人が海外に移り住む際に課税されるものです。

ただし、課税される範囲は限定されています。

A. 対象者が転出前10年間の間に5年超住民票を国内に置いている(もしくは居所がある)

B. 対象となる金融商品の時価が、転出時1億円以上

C. 転出時において含み益が生じている

Bの対象となる金融商品は、株・投資信託・未決済信用取引・デリバティブ取引などです。

基本的に金融商品は実際に売却した際に所得計上されるのですが、この制度は含み益に対する例外的な課税方法になります。

これは含み益のある財産を持つ富裕層が、出国してから売却すると課税されないという法の抜け穴を生かして課税逃れすることを防ぐためです。

なお所得分類上は売却でかかる所得と同じで、例えば株式であれば分離課税の譲渡所得、デリバティブであれば先物取引などにかかわる雑所得(同じく分離課税)になります。


検討されている出国税:交通費的な扱い

主に外国人観光客からの徴収を考えている「出国税」は、関所の料金みたいなイメージで所得課税とは違った方式と考えていいでしょう。

オーストラリアで60豪ドル、韓国で1万ウォン徴収する事例がすでにあり、航空運賃などに上乗せする「納付金」方式を含めた定額負担が想定されています

徴収した出国税を基に、さらなる観光客の受け入れ体制を整え、観光を充実させる目的があるとしています。


国内居住者にまで徴収する可能性も

観光財源のためであれば外国人観光客から徴収となるのでしょうが、観光客と日本在住者の区別が難しい取り方となると、国内居住者も含んでとなる可能性はあります。

航空機を利用する出国者に対しては、すでに空港使用料という形でもとっており、さらに出国税徴収となると「出国だけでどこまで取るのか?」という批判が想定されます

また東京都・大阪府などの地方自治体も独自の宿泊施設課税をとっており、その上乗せ的な役割を果たすようにも見えます。

また富裕層向けとはいえ「国外転出時課税」と観光財源の出国税のダブルパンチは、同様の批判を呼びそうです。

検討されている出国税の対象者をどうするかは、慎重な議論が必要だと感じます。(執筆者:石谷 彰彦)